Posted 24 2月 2010 — by mika Category memo
temp pressの澤辺由記子さん のご紹介で、東京都板橋区にある内外文字印刷株式会社に、マレビトスクールのメンバー
久保元幸さん と、建築家の
松畑強さん と一緒に見学にお邪魔しました。
代表取締役会長の小林敬さんから頂いたお名刺には「どこまでもグーテンベルグ わたしたちは金属活字活版印刷tで本造りを続けます」という宣言のお言葉。午前中いっぱいのお時間を頂いて、馬棚にぎっしりと並ぶ活字や、活字を鋳造する機械、文字を拾う作業、文字を組んでページを作る作業、印刷の作業を見せて頂き、いろいろとお話を伺いました。自分が生まれる前から使われ続けている機械が働く様子や、鋳造される一つ一つの文字のモノとしての存在感、指先に眼がついているかのように仕事をされる職人の方たちの所作に圧倒されたひとときでした。
DTP、インターネット環境にどっぷりと浸かって生活している自分のことを振り返ると、人の発する言葉が活字として立ち現れ、離れたところにいる人の眼と手のもとに届けられるまでに、途方もなく手の込んだ行程を要していたこと、今の文字伝達環境が長い歴史と技術の蓄積の上に成り立っていることを忘れてしまっています。本や雑誌の原稿執筆や、翻訳の仕事をするという立場で、印刷物の生産にかかわっているものの、キーボードを叩き、データのやり取りをすることが作業プロセスのほとんどを占めていて、手で紙の上に文字を書くこともほとんどないし、ゲラ刷りの確認ぐらいしか、紙の上で作業をすることはなくて、出来上がった雑誌や本が手元に届けられても、それによってモノを作っているという実感が得られることはあまりなかったりするのです。
世の中の趨勢から、過去にそうであったように活版印刷が産業として成り立つということは今後ないのだと思います。しかし、技術の成り立ちを知り、そのプロセスをたどり、その手触りや音、匂い、重み、温度といったことも含めて触れておくことは今、必要なことなのではないか、とも思うのです。
Posted 03 2月 2010 — by mika Category memo
トークイベント「モテる写真!」に関連して、「私が惚れた写真集たち」を数冊ご紹介します。美術関係の教育機関で定期的に講義をしたり、写真関係の本を翻訳したりしてきた経験もあるので、それなりの数の写真集やカタログなどを資料として買ったり、図書館で借りたり、時には頂いたりして見てきています。いずれ仕事で使うから買ったとか、たまたま手に入ったから持っているという本も多いのですが、どうにも気持ちが動いて仕方ない、手元に置いておきたいと惚れ込んで買ってしまったものも、数々あります。
そういう写真集を、生活の中で頻繁に手に取って見ているのか、と言われると実際のところそうでもなかったりするのですが、一度手に取り、ページを繰ると、やっぱり好きだなぁという気持ちがじわじわと湧くし、住む場所を変えても、処分したり仕舞ったりせずにずっと近いところに一緒にいるものなので、私になにがしかの影響を与えてくれるものだと思います。
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そういうことをつらつらと考えながら、本棚を眺めていて、まず手に取ったのが
アンドレ・ケルテス の『from my window』(1981)。長年連れ添った妻エリザベスに先立たれ、塞がった気分で過ごしていたケルテスは、偶然手に入れたポラロイドカメラSX 70でニューヨークのワシントン・スクエア近くにあるアパートの窓辺で、手近にあるものを撮り始める。当時彼は84歳。それまで白黒写真で撮っていた彼にとってポラロイドによるこのシリーズは、初めてのカラー写真による作品、ということでもある。ポラロイド特有の、表面の層に光が溜まっているような密度をそなえた発色。
光の差し込む窓辺に置かれたさまざまなオブジェ の中に、滑らかな曲線をえがく胸像のようなガラスのオブジェがある。ケルテスが近所のアンティークショップの店先で見かけたときに、そのかたちがエリザベスの姿と首筋を彷彿させるからという理由で衝動的に買い求めたものだという。ガラスのオブジェは、窓辺の光の移ろいを透し、階下の眺めを留め、刻々とその色合いと表情を変えていく。その表情を写しとめることに彼は日々の大半の時間を費やしていたのだという。「for Elizabeth」という冒頭の献辞に添えられた写真に収められた、正面を見るエリザベスのモノクロームのポートレート写真。彼女の肩を抱く手はケルテス自身のもの。写真の上に重ねられたいばらの輪。時間の層に触覚が深くたくし込まれている。
この写真集に巡り会ったのは、20歳代前半。ニューヨークに旅行していて
URSUS BOOKS という古書店本屋で見つけて、思いきって購入した。その当時は、この作品にまつわる、一人の女性への愛情に根ざしたエピソードに感情移入して、光の移ろいがもたらす豊かな色の表情に惹かれて、見えない女性の佇まいに重ね合わせて想像しながら写真を見ていたように思うのだけれど、今はもう少し違う見方もできる。
この本は、正方形に近い版型で、上下左右に写真と同じくらいの幅、高さの白場が設けられている。つまり、写真が紙面という表面に穿たれた窓のように現れ、対面するページを連なるように続いていく。手近に捉えられたオブジェは、その背景に退く遠景の光によって、内省と回想の空間を立ち上がらせる。窓の内側として描き出される空間は、光が到来するその遠い在処につながっている。小さな窓から視線をどこまで遠く届かせることができるのか、という深い問い。windowの語源が「風の眼」という意味を持つことを思いながらページを繰ると、色の移ろいは私の眼の奥で、風のような空気の流れとして立ちあがる。
写真集の表紙はあたたかな光を彷彿させるようなオレンジ色、その影のようにはりついた見返しのインディゴ・ブルー。光と影、内側と外側、近さと遠さ、その往還を暗示しているようでもある。
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Posted 30 1月 2010 — by mika Category memo
イタリアのcontrasto books から出版されているFOTO:BOXという本を翻訳させて頂くことになりました。現在刊行されているのはイタリア語版ですが、頂いているテキストは英語。振り返れば、最初に共訳で2001年に出版させて頂いた『写真のキーワード 技術・表現・歴史』 以来、訳者として名前が出る仕事は5冊目、ということになります(それ以外に、部分的に関わっているものもありますが。。)。これまでに写真にかかわる仕事を続けて来られたのは、翻訳するという立ち位置を時折頂くことができたからなのかも、と思っています。
翻訳者は黒子のような立ち位置の仕事で、私が介在することで本を手に取って、写真家のことや作品のことに興味を持つ人が少しでも増えれば嬉しい。
FOTO:BOXというタイトルのとおり、箱のような佇まい。厚さは5センチ弱。ページが開く側が、マグネットで軽く閉じられるようになっています。テーマごとに選ばれた写真が見開きの右側のページに、左側のページにはその作品の解説と写真家の略歴が掲載されているという構成。パラパラと文章を読むと、作品の背景解説にとどまらない、見方、味わい方の指南も含まれている文章もあって、良いなと。
作品総数は250点余り。選ばれているのは19世紀半ばから現在にいたるまで幅広いのですが、いわゆる西欧社会の写真史文脈の巨匠達のよく知られている作品とイタリアの写真家の作品が多い。せっかく今編集して作るのなら、アジア、アフリカ圏の作家も入ってきたら尚良いのに、ね。
ベッドの上に置いて撮ってます。奥のクッションのせいで若干大きく見えるけれど、実際はB5変形程度とそんなに大きくはないけれど、ずっしりと重い。
マレビトスクール バレンタインデー企画 「モテる写真!」
「写真」と「モテる」をつなげる参加型トークイベント
自分の写真を世の中でモテさせたい、そもそも写真を撮ってる自分がモテたい、こんな写真集を持っていたらモテそう、こんな写真が部屋に飾ってあった らモテそう、写真展に行くとモテるかも、、など、「写真」と「モテる」をつなげることで、さまざまなをご利益を創出できるのではないかという目論みのも と、参加型トークイベント「モテる写真!」を開催いたします。
マレビトスクールのメンバー3人、写真研究者の小林美香、ギャラリーNadar代表林和美、Photta- lot代表の柿島貴志が、「どうしたら写真が世の中でモテるのか」と試行錯誤しながら写真に関わって仕事をしてきた立場から、トークのモデレーターをつとめます。
参加者の方には、それぞれ自分が色気を感じる写真か写真集をお持ち頂き、その写真(集)のどこに、なぜ色気を感じるのかを、自由に語って頂きます。
持ち寄って頂いた写真を見ながら、写真の魅力を発見し、それぞれの見方、感じ方を共有する時間を持つことができれば、と考えています。
マレビトスクール代表 小林美香
開催日時 2010年2月12日 19:00-21:00
会場 Nadar Shibuya 355
150-0002 東京都渋谷区渋谷3-5-5 HAKKAビル2F
参加費 1000円
定員 15名(ご自身が色気を感じる写真、写真集をお持ち下さい。)
申し込み お問い合せ先 mika@marebito-school.com
参加人数/お名前/連絡先をご明記下さい。
Barカキシマ バレンタインデー特別仕様の飲物と軽いおつまみをご用意します。
twitterのアカウントをお持ちの方は、ハッシュタグ #moterushashin でご自身が色気を感じる写真、写真集について呟いてください!
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小林美香 http://www.mikakobayashi.com/
柿島貴志 http://www.photta-lot.com/
林和美 http://kazumi-h.net/
Posted 24 1月 2010 — by mika Category memo
くくのち学舎 で開講された折形講座(3)心の折形、結びかた に 参加して、水引の結び方やその意味を教えて頂く。この講座には昨年も一度参加させて頂いたことがあった。折形デザイン研究所 の山口さんのお話を聴いて、折形の成り立ちや、歴史的背景、考え方などを学びながら実際に手を動していくので、知識とともに触覚的に体得できることが多い。
両輪(もろわな)結び、結び切り、あわじ結び、といった結び方が、贈る物や贈り物を受け取る側本位の方法として成り立っていること、「むすび」という言葉が「むすこ」や「むすめ」とつながっていること(男女の結びの先にあるものとして)など。
私は蝶結びも苦手なのだけど(なぜかいつも縦結びになってしまうという体たらく)、和紙や水引の感触を味わいながら、人に差し上げるようにものを包む方法ということを学ぶことは、気持ちにかたちをあたえる術を知る、ということでもあるのだなと腑に落ちる。
すでに折線のついた折形の紙を頂いて、折り曲げていくと、小さな家のような形の箱状のものができあがる。切り込みも入れず、接着もしないのに端正な立体になるのがすばらしい。中に和三盆のお干菓子「三かく四かく」 を一つ入れ、紅白の水引一本で両輪結びをほどこすと、小さな贈り物の完成。
二人静にも似たこのお干菓子、舌の上ですぐにさらりと溶けていく。一度自分の手で包んで結んだものを、解いて口の中に入れると、自分の体もまた何かを包み、解かれる紙の器に近しいものかもしれないとも思う。
Posted 10 1月 2010 — by mika Category memo
LIVE BOOKS というサンフランシスコの会社のサイトで、Future of Photobooks というプロジェクトが組まれていて、制作、消費、財源などの観点から、写真集のこれから、が議論されています。オンデマンド出版、電子書籍など出版のあり方が大きく変わっていくなかで、何が写真集というものを成り立たせるのか、今後の展開が興味深い。
その中の一例に、Kindleのような端末の発展した形として、操作性、拡張性を備えた「未来の雑誌」のフォーマットが提案されています。
Mag+ from Bonnier on Vimeo .
たしかに、膨大な情報を、一つの端末として持ち運べるのは便利だろうし、そのインターフェースのあり方も興味深いのだけれども、モニタの透過光で表れ、表面に去来する像は、どれだけ眼の奥に残るのだろう、とも思う。
像の支持体であるマテリアルに、その像を宿した固有の表面に触れたい、触るように見る、ということを、私はしたい。
ものであれ人であれ何であれ、気持ちが動かされる対象を触れることへの切実な欲望を代替するものはないし、触れるということがなければ、その表面という境界を越える想像力も働かないのではないかしら。
Posted 02 1月 2010 — by mika Category memo
新しい年の始まり。
過去2年間は移動が多く、流浪の過程で自分の中で何かが解体し、かかわってきた人との距離が否応なく変化していくのを痛感した時期でもありました。そのなかで、あらたな萌芽を見出すことができたのは幸いだったと思います。
写真は、去年アメリカ西海岸を旅するなかで、サンディエゴの郊外、ラホヤで見てきた、ルイ・カーンが設計したソーク研究所 。研究所の対象形をなす建物の間の広場に作られた水路を流れる水が、太平洋に流れ込むかのように見えます。
日々成し得ることがどんなに僅かであっても、水路を掘り続けるような自らの営みがやがて大海の飛沫へとつながるように。空の色や光の移ろいを映し出す水路の水面を眺めながら、去来したのはそういう想いだったのかもしれないし、創造すること、探求することへ賭する人たちへの畏敬の念だったかもしれない。
元日は、二年前のこの日に急逝した友、内野雅文君 のことを想う日にもなりました。合掌。
Posted 20 12月 2009 — by mika Category memo
Raj Patelの新作が来年初に発売になります(イギリスではもう販売しているらしいけれど)
サンフランシスコに住んでいた時に話を聞きに行った社会運動系の1
968 the great rehearsal というカンファレンスで話を聞いて、食料と経済の問題に関する
Stuffed and Starved という著作を読んで感銘を受けたのでした。
本の宣伝と最初の章のpdfが配布されています。本の作り方、売り方も変わってきたもんです。